6 「もう一回……お願い、苦しいの」 「でも……僕は、もう」 性器が抜けて、アキラのアナルからは入りきらなかったクスリが流れた。 アキラはうつむいたまま息をあらげる。先生はベッド下に落ちためがねをかけ直し、アキラのパジャマを手に取る。 すると、アキラはゆっくり膝に力を入れた。体力も消耗してしまってはいるが、残りの力をふりしぼって四つんばいになる。 「アキラ!なにやっつ――」 アキラは両手で入り口を広げた。何回も出されたせいかそこからとめどなくねばねばの液体があふれてきて、赤くはれていた。 「僕のココ、に……」 ――先生のが欲しい。 そういう前に、先生のがアキラを貫いた。 「ああっ、せんせー……大好きっ……」 「僕も……好きだ、アキラ……」 「はあっ……はあ……」 先生はゆっくり性器を抜いた。アキラの腰がガクンと砕けてその場に倒れこむ。先生は窓際のティッシュをアナルにあてた。 「すごい量だな……こんなの初めてだよ」 「うん……」 先生の性器も濡れて光っていた。アキラは大きく足を広げた。いきむとそこから液体が流れ出る。 疲労が全身を包み、アキラは体の力を抜いて先生に身を任せた。先生のキスを唇に感じ、舌を絡ませた。 「気持ちよかったよ……せんせ――」 そのとき、閉じていたまぶたごしにまぶしい光を感じた。 ガシャンとなにかが床に落ちる音と、女の人の悲鳴。 音のしたほうに目を向けると、開いたドアの向こうでしゃがみこむ看護婦さんと転がる懐中電灯が見えた。 でも何回も行為を重ねた体は重たく、アキラの体は心地よい疲労に包まれていた。 先生はベッドから降り、ズボンを上げた。 病室の電気がつく。 自分の体がすごい状態になっていたのでなんだかおかしい。看護婦さんはなにか叫んでいるみたいだったけどアキラには聞こえなかった。 まぶたがおりる寸前、アキラは先生の白衣をひっぱった。 でもそれはあっけなく手の中からするりと抜け、アキラは目を閉じた。 一定のリズムでゆれる車内は心地よく、爆睡していたらしい。 目を覚ますと友達がトランプゲームで盛り上がっていた。 左右に動かして首を動かすと、「おっさんかよ」とからかわれた。バッグからミネラルウォーターを取り出し、口に含む 「……いまどこらへん?」 「ああ……どこだっけ」 「確か、さっき名古屋だったぞ」 密集した建物がなく、閑散とした風景だ。 ファミリーレストランやショッピングセンター、ホームセンターがぽつぽつとある。どこも駐車場が大きい。 昔住んでいた街もそうだった。閑散とした街だったから、総合病院がひとつあるだけで事足りていた。 あの病院はまだあるのだろうか。 「ほい、アキラの番だぞ」 「あ?ああ」 トランプを渡されたので流れで参加した。みんな盛り上がっているようなので、とりあえず楽しもうと心の中で思う。 あのときの、白衣の感触はいまでも思い出すことができる。 アキラの両親は憤慨したが、「先生が刑務所に入れられるなんていやだ」とアキラが泣きわめき、彼の精神的な負担も考慮して先生はクビになっただけだった。 それでも世間の目を気にして、アキラは隣の県へ引っ越した。アキラの病気は回復し、中学に入ると念願のサッカー部に入部した。 大和と一緒にサッカーをすることもなくなり、二度とあの町へは帰らならいのだろうと子供ながらに感じたものだ。 両親にはいつも言われていた。先生とのことは誰にも言うなと。 だから、いまこうして一緒にいる部活仲間はアキラの過去を知らない。 知っているのは、サッカーが好きで、ちょっとわがままで甘えん坊なやつだということ。 「あ!」 友達のひとりがなにかを思い出したらしく、声を上げる。 「そういやさー、西中のマネージャーが言ってたんだけど」 「なにが?」 「なんかー、アキラのこと気になってるらしいぜ!」 そう言った友人に頭をくしゃくしゃにされる。トランプが散らばり、座席の下に落ちた。アキラはそれを拾おうと手を伸ばす。 「西中のマネージャーってめちゃくちゃかわいい子だよな」 「いいなあ、うらやましい……」 「んなことより。足どけろよ、足……」 周りがはしゃいでもアキラは迷惑そうな顔をして座席をのぞき込んだだけだ。落としたトランプのうち、一枚が後ろの座席に行って、誰かがそれを拾ってくれる。 「アキラって、女の子に興味ないよね」 友達はいつもそうやって硬派なアキラをからかった。アキラは座席の下から出てくる。 「落としたよ」 「ああ、すいませ……」 後ろの男性が声をかけたのでアキラは顔を上げた。 視界に見えた白い影。 ふわっとなびくとアキラはとっさにすそをつかんでいた。 ――行かないで。 フラッシュバックした、遠い日の記憶。 「どうしたんだよ」 「あ……」 我に帰り、あわてて手を離した。白衣を右手に引っかけた数学教師の田島は、きょとんとした顔でトランプを差し出した。 田島は一応顧問だった。顧問といっても実際の指導はコーチがおこなうので彼の仕事は事務的なものばかり。だから、あまり部活自体には顔を出さなかった。 「……合宿にまで白衣持ってくるんすか」 「落ち着かなくてさあ、職業病だろうな」 アキラは深いため息をつき。トランプを握りしめた。 座席についたとたん、両手から汗が噴き出す。そんなアキラを見て、友達同士、顔を見合わせた。 「なに?アキラって白衣フェチなの?」 「は?」 「がっつり引っ張ってたから、フェチなのかと」 「んなわけねないだろ」 アキラは立ち上がった。戸を開けて、自販機のあるブースに行く。冷たい缶コーヒーを買うと、熱くなった手の上で転がした。 ドアに背中をあずけ、右手の親指と人差し指の感触を確かめてみた。はっきり違うとわかる。というか、田島の白衣にさわった瞬間に感じた。 あの日以来、先生のことも入院していたことも誰にも話してない。もちろん家族にも話してない。父親も母親も、アキラはもう立ち直っているのだと思ってくれているに違いない。 でもアキラの指は先生を覚えていた。それはたぶん、何年経っても消えないのだろう。 指先を擦り合わせながら、アキラはあの日の感触を思い出していた。 |
●あとがき●
完結です。ちょっと成長したアキラを出しました。
先生とどうなったかは最初から考えてたのですが、
いかがでしょうか??
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